理想のライフスタイルを100%実現できている

—— 結婚後も東京で生活していたということですが、青森に戻ってきたきっかけは何だったのでしょう?

進さん(以下S):私は東京に生まれ育ち、会社で代表を務めていたので、東京から出るということはそもそも全く考えていませんでした。ところが、東日本大震災が起こって状況が変わりました。
震災の後も余震が続いていたので、妻と当時1歳だった子どもを沖縄に避難させ、自分だけ東京で仕事を続けていました。避難生活の末、十和田市にある妻の実家に帰省した時、第二子の妊娠が発覚しました。そのため、そのまま十和田市に滞在して出産することにしました。しかし、生まれた子どもがNICUに入院することになってしまいました。

千枝子さん(以下C):子どもを産んで少し落ち着いたら東京に戻るつもりでしたが、子どもが入院したので、すぐには戻れなくなりました。それと同時に、東京の生活が少し窮屈に感じ、自分には合わないと思うようになりました。
東京は人が多くて子どもが育てにくい。そういう意味では「田舎っていいな」と思いました。それに、震災、出産、子どもの入院、と続いたこともあり、東京に帰ることで親の手が借りられない状態になるのは厳しいなと思いました。

S:東京に家を建てていたので、家が売れたら移住しようと考えていました。2、3年でようやく家が売れたので、いよいよ十和田へ移住する準備が始まります。
先輩移住者の友達がいたので、仕事を探す際に色々と相談に乗ってもらっていました。デザインの仕事は十和田では難しいと思っていたので、そうでなくても何かを「つくる」という仕事に携わりたいと考えていました。そこで、杜氏の方を紹介してもらい、見習いとして酒造りをすることになりました。
ところが、十和田で生活することを決めた直後に、入院していた第二子が亡くなってしまいました。ショックでしたが、導かれたのだとも思いました。

C:酒造りが始まってみると、想像よりもハードな肉体労働でした。その傍らでデザインの仕事もやっていました。
移住してきて3年目ですが、不思議と酒造りが忙しい時にデザインの仕事もたくさん舞い込んでくるので、今年からはデザインの仕事に一本化することにしました。

—— 自分の思い描く理想のライフスタイルと比べると、今は何%くらい達成できていると思いますか?

S:ほぼ100%じゃないかな、向上心が無いと言われそうですが(笑)。東京の忙しさをまた経験したいかと言われたら、あまりしたくないです。むしろ量ではなく質を高めたい。こちらは暮らしやすいと思います。
一番の魅力は人の少なさだと思います。人が少ないということは、一人ひとりと深く関われるということです。
自分の作品も、東京で生活していた頃とは変わりました。自分らしい仕事ができているように感じます。東京で働いていた頃は、会社のスタイルに自分を合わせている形でした。今は本来の自分が出せるので、楽しいです。

—— 東京時代と今では作風が変わったという話がありましたが、何がそうさせているのでしょう?

C:責任感の質が違うのだと思います。東京だと、代わりはいくらでもいるという意識があります。こちらは人が少ないこともあって、みんなそれぞれ役割があります。代わりがいないという責任感を感じます。

青森は人と人との距離が近い

—— 自分の作品との向き合い方も変わってきたのでは?

C:エンドユーザーの声がダイレクトに聞こえるのが嬉しいです。十和田市に来て初めて手掛けた仕事は、地元のガイドブックの作成だったのですが、生まれ育った地域に関する仕事だったので思い入れがありました。「見たよ」「よかったよ」と言ってもらえるのが嬉しかったですね。やはり青森は、人と人の距離が近いと思います。

S:デザイナーもライターも、それぞれ単独で見たら青森にも既に活躍している人がいると思ったので、価値を出すために2人で一緒に仕事をすることにしました。それが「字と図」です。周りにそれを話したら、ユニットのように活動する発想が面白いと言ってもらえました。

家にいながら働いているから、子育てにも貢献できる

C:子供ができたら仕事ができないと思っていましたが、現に実家で子育てしながら仕事ができているので、楽しいです。

—— お二人の話を聞いていて、楽しみながら仕事ができている感じがします。

S:家に居ながら仕事をしているので、子育てがしやすいです。子どもの保育園の迎えにも行きます。東京では夜10時過ぎまで仕事するのが普通でした。子育てに貢献でき嬉しいです。

—— この先、青森でどういう仕事をしていきたいと考えていますか?

S:青森ならではの仕事がしたいですね。

C:クライアントがいない、自分たちが創る仕事も定期的にやっていきたいです。

S:地元の人は、地元のいいところを知らないことが多いと思います。でも、外から見るといいところはたくさんあります。私みたいな外から来た人の意見をうまく利用してもらいたいです。

—— それでは最後に高校生に一言どうぞ。

S:「イレギュラーであること=他と違うことをする」ことを恐れないで欲しいと思います。
全国的に言えることですが、まずは学歴を重んじる風潮があります。でも、まずは家庭を持ってから自分の好きなことをするというような、一般的な「普通」とは違う生き方があっても良いと思います。

C:震災の避難生活中、カナダでホームステイしていた時にお世話になった夫婦は、二人そろって子供を産んでから大学に通っていました。カナダはそういうことが普通にできる環境だそうです。日本もいずれそうなればいいなと思います。

Q1高校生の時になりたかった職業は?

図/グラフィックデザイナー

字/ 悩み中でした

Q2高校生の時にやっておけばよかったことは?

図/ 海外ホームステイ

字/アルバイト

Q3あなたが影響を受けたヒト・コト・モノは?

(ヒト)

図/ デザイナーの叔父、大学の恩師、井上陽水、長新太、和田誠、クエンティン・タランティーノ

字/ 水木しげる

(コト)

図/ 東日本大震災

字/ 出産と病気と入院、カナダ生活

(モノ)

図/マンガ(とくに寄生獣)

字/サブカルチャー

Q4仕事でいちばんうれしかったことは?

図/ デザインしたモノを手に取った人から依頼が来た時。

字/ 仕事をご一緒し応援していた方が、いまや国際的映像アーティストになったこと。

Q5仕事でやらかした一番の失敗談を教えてください

図/ 勤めていた頃、20万部の印刷ミスをユーザーから指摘され発覚(汗)。

字/ 雑誌発売日にインタビューした方から電話がきて「発売を中止して」と言われたこと(泣)。

Q6仕事をはかどらせるための潤滑油は何?

図/ 音楽とラジオ。それから、美味しい食べ物。子供の笑顔。

字/猫と遊ぶこと。

Q7今後の野望をおしえてください

図/ 手がけた事のない分野のデザインをしてみたい! 活動領域の拡大(地域も媒体も。クライアントワークスだけでなくオリジナルワークスも)。デザインって何?をみんなが答えられるような日本にしたい。できれば義務教育にデザインを!

字/ カナディアンネイティブアートを紹介したい

Q8生まれ変わったら、なりたい職業は?(今の職業以外で)

図/すし職人

字/医療関係者

Q9最近のニュースをどうぞ!

図/写真集『アオモリドラゲナイ』を作りました!

字/第三子が無事生まれました。

プロフィール

吉田 進(よしだ すすむ)/ デザイナー[図]

東京の大学へ進学、在学中から就職、大学卒業後、フリーランスを経て起業。第2子の妊娠・出産を機に、東京から妻の実家がある十和田市へ移住。現在、デザインユニット「字と図」の『図』として十和田市を拠点に活動中。

プロフィール

吉田 千枝子(よしだ ちえこ)/ ライター[字]

東京の大学へ進学、卒業後、編集者として就職。第二子の妊娠・出産を機に、東京から実家がある十和田市へ移住。現在、デザインユニット「字と図」の『字』として十和田市を拠点に活動中。

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